みなさん、はじめまして。GOODBRAINで脳波デバイスの販売を担当している岡林です。
本記事では、GOODBRAINが取り扱っている脳波デバイス「FocusCalm™」と「Muse2」のそれぞれの特徴及び両製品の相違点について、詳細にまとめて行ければと思います。
FocusCalm™とMuse2のどちらを買うべきか?
結論から言うと、総合的に見てFocusCalm™がおすすめです。ただし、デバイスの特徴が異なるので、両者を比較して、自分の好みのデバイスを購入されることをお勧めします。また、実験用に購入することを検討されている方は、こちらの記事をご覧ください。
両製品にどのような特徴があるかは、以降に記載する両製品の比較をご覧ください。本記事の最後には、両製品を一年間使用した感想を記載しましたので、ぜひ参考にしてください。
製品概要
FocusCalm™、Muse2ともに海外製品となります。弊社ハコスコが手掛けるブレインテック事業「GOODBRAIN」では、これらの2製品を国内正規代理店として、販売を行っております。
本記事では、GOODBRAINが取り扱っている脳波デバイス「FocusCalm™」と「Muse2」と、GoodBrainアプリとの相性を詳細にまとめました。
脳波デバイスでの脳波計測実験にはGoodBrainアプリがおすすめな理由
Muse2とFocusCalm™は、こちらの記事で主に「マインドフルネス」デバイスとしてご紹介してきました。ただ、両製品は脳波を測定可能な「脳波」デバイスであるため「マインドフルネス」以外の用途でも利用が可能です。
メーカー公式の専用アプリだと、脳波測定の結果をα波やβ波等の周波数帯で表示・取得することは出来ません(独自の指標によって表示されるのみ)。また測定結果のCSV取得もできません。実験等に利用する場合は、これらのデータ出力が必要となる場合が多いと考えられるため、GooBraindアプリのような、SDKを利用したサードパーティー製のアプリが必要となります。
GoodBrainアプリは、測定した脳波を周波数帯で表示し、csv取得することが可能であるため、実験用の脳波計測には特におすすめです。
以下ではハコスコ社が公開しているGOODBRAINアプリと、公式アプリとの相違点を比較表形式でご紹介します。
アプリ名 | (公式)FocusCalm™™ | (公式)Muse2 | (ハコスコ社)GOODBRAIN | |
---|---|---|---|---|
利用するデバイス | FocusCalm™ | Muse2 | FocusCalm™ | Muse2 |
ガイドマインドフルネス機能 | 〇 | 〇 | × | × |
マインドフルネス以外の機能 | △(トラッカー機能) | × | 〇 | 〇 |
CSV出力 | × | × | 〇 | 〇 |
出力されるデータの違い | × | × | ・集中度、リラックス度(約1Hz)・周波数帯のバンドパワー(約5Hz) ・脳波の生データ(約250Hz) | ・周波数帯のバンドパワー(10Hz)・脳波の生データ(約50Hz) ・動きに関するデータ ・バッテリーに関するデータ ・脳波計のフィット具合 |
※1:FocusCalm™はアプリの全機能が有料のため、利用にあたってはいずれかの購入が必要
※2:必要であれば、有料のマインドフルネスガイダンスをアプリ内で購入することが可能
製品仕様・特徴
続いて、製品の基本的な特徴をご紹介いたします。
FocusCalm™ | Muse2 | |
---|---|---|
専用アプリ | あり iOSはこちら Androidはこちら | あり iOSはこちら Androidはこちら |
付け心地 | 〇 長時間の着用でも問題ない仕様、着用しながら動きやすい | △ 長時間の着用だと、耳のセンサーがずれたり、きつく締めると痛くなりやすい。眼鏡をかけていると耳の裏がやや窮屈。 |
スマートフォンとの接続方法 | Bluetooth接続(ワイヤレス)のみ | Bluetooth接続(ワイヤレス)のみ |
日本語対応 | 未対応 | 未対応 |
付属品 | 充電ケーブル(USB⇔Type-C)専用収納ケース補助バンド(長さをさらに調整したい際のゴムバンド) | 充電ケーブル(USB⇔microUSB) |
(別売)アクセサリ | なし | 専用収納ケース |
センサーとその位置 | EEGセンサー:ひたい部3か所(耳のセンサーはなし) | EEGセンサー:ひたい部(5か所)+両耳部PPG+パルスオキシメーター(心拍数測定):右ひたい部Gyroscope:内臓(PPGと組み合わせて呼吸マインドフルネス時に利用) |
共通している特徴:
FocusCalm™、Muse2はいずれの製品も「マインドフルネス」をしている際の脳波の状態をリアルタイムにフィードバックし、スマートフォンアプリを通してグラフ化・日々の履歴を管理することが可能という点で共通しています。マインドフルネス中に、自身がいまリラックスしているのか? 緊張しているのか?といった一人で判断が難しい問題を、客観的な数値に落とし込んで教えてくれます。これにより、マインドフルネスの上達や習慣化の助けに繋がります。
内容物の写真:
FocusCalm™には収納ケースが付属しますが、Muse2は収納ケースが別売りとなっています(ハコスコでは収納ケースの販売は行っていません。)
センサー位置の画像:
Muse2:
左:5つのEEGセンサー|中央:心拍|右:両耳EEGセンサー|本体内臓:Gyroscope
FocusCalm™ :ひたい部に3か所のEEGセンサー
公式アプリの画面説明
続いて、メーカー公式アプリについて、表示される画面の違いや、どのような指標でグラフが表示されるのかをご説明していきます。
FocusCalm™アプリの画面:
左:日々の管理画面、右:マインドフルネス後の画面(5分マインドフルネスの結果)
FocusCalm™アプリでは、マインドフルネスの結果を以下の3つの指標で評価します。
Depth:深いリラックスが出来たか?
Consistency:そのリラックス状態を維持できたか?
Speed:スムーズにリラックス状態に入れたか?
3つの指標が各500XPとなっており、最大1500XPで評価されます。このXPグラフの結果が週間・月間・年間でグラフ化され表示されます。また、マインドフルネスの状態は大まかに、アクティブ・ナチュラル・リラックスの3段階に分けられて、その推移がグラフ表示されます(右画像上)
Muse2アプリの画面:
左:日々の管理画面、右:マインドフルネス後の画面(6分半マインドフルネスの結果)
Muse2はマインドフルネスの結果をmuseポイントとリカバリー回数、そして鳥のさえずり回数で評価します。FocusCalm™と同様に、マインドフルネス時の状態をアクティブ・ニュートラル・カーム(calm)の3段階に分けています。
museポイント:ニュートラルの状態1秒に付き1ポイント、カーム(calm)の状態1秒につき3ポイントが付与されます。実施するマインドフルネス時間が長くなればなるほど、ポイントは加算されていきます
リカバリー:アクティブ状態になってしまった際に、そこからニュートラル状態へ回復したときに1カウントされます。
鳥のさえずり:5秒以上Calmの状態が継続すれば鳥がさえずります。
※Museアプリでは、日間・週間・年間のグラフはありません。最新10日間程度のマインドフルネス時間が表示されます(左画像上部)
公式アプリの機能と特徴、相違点
公式アプリの使い勝手や機能的な違いについて、さらに詳細を比較表にまとめました。
FocusCalm™ | Muse2 | |
---|---|---|
マインドフルネスのガイダンス | あり(英語のみ) | あり(英語のみ) |
画面表示や操作性 | アプリを開くと5つのタブがあります。Museアプリと比べると機能が多く充実している一方で、画面操作に慣れるまではやや時間を要するかも知れません。 (5つのタブ) Home:この画面は他の4つの機能が1か所にまとめられている画面です。 Programs:マインドフルネスガイドプログラムの選択が出来ます。 NeuroGames:2種類のゲームトレーニングを行う画面です。計20以上のゲームが用意されています。 Meditation:マインドフルネスプログラムを選択する画面です。 Profile:日々のマインドフルネス管理の結果が表示されます。ウェルネスカレンダーやトラッカー機能※もこちらから選択可能です。 ※トラッカー機能は後述 | 選択タブが以下の三つとシンプルな設計です。4+1つのマインドフルネス機能を選択又はガイドマインドフルネスを聞く以外の機能が基本的に備わっていないため、複雑さはありません。 (3つのタブ) Me:HOME画面。日々のマインドフルネス管理のまとめが表示されます。 Meditate:マインドフルネスプログラムやガイダンスを選択してマインドフルネスを実施する画面です。 Setting:設定画面です。 ※2022年5月にアプリの画面リニューアルが行われました。その際に3つのタブのうち、settingがMeタブの右端に移動し、新たにSleepタブが加わりました(Muse2の後継機、MuseSのユーザー向けの機能。MuseSは国内未発売です) |
マインドフルネス中の違い | マインドフルネス時には英語でのガイダンスが流れます。常時ガイダンスを聞きながらマインドフルネスをする形式です(音声を消すことは可能) リアルタイムフィードバック: 画面上に0-100の数値が常に表示されます。リラックス状態に近づけば数値は100になります。マインドフルネス中も表示され続けますが、視覚的に確認する形です。マインドフルネス後は数値の推移をグラフで確認することが可能です。 | マインドフルネス中にガイダンスが流れるガイドマインドフルネス、BGMのみを流すマインドフルネスを選択できます(各BGMやガイダンスはそれぞれボリューム調整可能)。 リアルタイムフィードバック: マインドフルネス中にリラックス状態が継続すると鳥のさえずりや鐘の音が聞こえます。耳でフィードバックを得る形のため、目を閉じた状態でマインドフルネスを続けられます。 |
備わっている機能 | 以下3種類のマインドフルネスを選択可能です。 ・ガイドマインドフルネス マインドフルネス中、ガイダンスが流れます(英語のみ) ・Breathマインドフルネス マインドフルネス中、ブレスのタイミングについてのガイダンスが流れます(英語)。画面上には、呼吸イメージ図がアニメーションによって表示されるため視覚的に学習が可能です。 ・Stories ストーリーを聞きながらマインドフルネスをします。 (その他の機能) ・2種のゲーム機能 FocusGame:より集中するためのトレーニング CalmGame:よりリラックスするためのトレーニング ・トラッカー機能:マインドフルネス以外の脳波の状態を記録することが出来る機能です。 ・ウェルネスカレンダー機能:日々の調子を顔マークで記録することが出来ます。 (デフォルトでは使用不可) 別途、主に法人向けとして、複数のアカウントを一つのWEBアプリケーションにて管理することのできる機能(Team Potal)もございます。詳しくは弊社案内ページか直接お問合せ下さい。 | 4つのマインドフルネス機能とTimer機能があります。 ・Mind マインドフルネス マインドフルネス時のマインドの状態を測定して結果をグラフ化します。 ・Body マインドフルネス マインドフルネス時の姿勢に関する情報をグラフ化します。 ・Breath マインドフルネス マインドフルネス時の呼吸に関する情報をグラフ化します。 ・Heart マインドフルネス マインドフルネス時の心拍の変化を取得してグラフ化します。 ・Timer機能 デバイスがなくてもマインドフルネスを記録することが出来る機能です。 また、マインドフルネス後にメモを記録したり、その日の調子を表情で記録することが可能です。 |
コンセプトの違い | マインドフルネス以外の機能が充実しています。そのため「マインドフルネス」を実践的に学ぶだけでなく、簡易なゲームを通してマインドを操作する感覚を磨いていくトレーニング的なアプローチが可能です。 また、後述する「トラッカー機能」はマインドフルネス以外でも広く利用が可能です。 | 「マインドフルネス」と「マインドフルネス時のフィードバック」に焦点を当てた機能が充実しています。EEGのほか、心拍数測定や体の傾き(ジャイロセンサー)を利用して、4パターンのマインドフルネスを実践することが可能です。 マインドフルネスすることを通してマインドフルネスの上達を図っていくという、より実践的なアプローチとなっています。 マインドフルネス以外の機能は公式アプリでは備わっていません。 |
(別売)アクセサリ | なし | 専用収納ケース |
センサーとその位置 | EEGセンサー:ひたい部3か所(耳のセンサーはなし) | EEGセンサー:ひたい部(5か所)+両耳部PPG+パルスオキシメーター(心拍数測定):右ひたい部Gyroscope:内臓(PPGと組み合わせて呼吸マインドフルネス時に利用) |
両製品を1年使用してみての感想
本製品を1年以上利用してみた感想としては「マインドフルネス」アイテムとして利用するなら、両製品とも一長一短だったという印象です。先述した通り表示されるマインドフルネス結果のグラフが異なっていることから、お好みにあった製品を購入することをおススメします。
両製品で個人的に気になった点をまとめてみます。
・付け心地
付け心地についてはFocuscalmの方が良いと感じます。Muse2は耳のセンサー測定のため耳の裏にもデバイスが回り込む仕様となっており、この部分の付け心地がいまいちなところがあります。フィット感を得られるまでにかかる時間(調節時間)はMuse2の方が長い印象です。また、Muse2は眼鏡のフレームとも若干ぶつかるので、マインドフルネス時は眼鏡を外した方がいいかも知れません。いずれにしても動きながらのマインドフルネスをしたい(散歩マインドフルネスなど)の場合はFocuscalmが良いかなと思いました。
・マインドフルネス中の違い
Focuscalmはアプリ上で0-100の数値が常にリアルタイムで表示され続けます。そのためフィードバックを得られている感覚が強いです。ただ、マインドフルネスするなら目をつぶることが多いので、マインドフルネス中はガイダンスが耳から入ってくるのみのシーンが多かったようにも思います(どのみちずっと画面を見ない)。では全く画面の表示を見ないかというと、そういう訳でもなく、Focuscalmにはガイドマインドフルネスの他、呼吸を学習するマインドフルネス「breathing」が存在しています。このbreathingマインドフルネスを開始すると画面上に以下のような肺のイラストが表示され、吸うか吐くか止めるかのタイマーが表示されます。
この視覚的に呼吸法を学べる機能は分かりやすさの面でも良いなと思いました。一方でMuse2は先述の通り4つのマインドフルネスを学ぶことが可能です。基本Muse2はマインドフルネス中は目を閉じており、呼吸のタイミングなどもガイダンスや音でアナウンスしてくれます。耳でフィードバックを得たいか(Muse2)、視覚的なフィードバックを得たいか(Focuscalm)という点で、両製品を選ぶのも良いかも知れません。
・製品品質
これは両デバイスを販売している側からの意見となりますが、品質についてはFocuscalmがよいと感じています。Muse2は頭の大きさに合わせてバンドの長さを調節できる仕様となっていますが、この調節部分(プラスチック製)の箇所がやや耐久性に弱く、扱いを雑にしていると電源不良を起こすことが分かっています(問い合わせも複数あり)。そのため調節時はゆっくりと長さを調節するように心がけて下さい。頻繁に伸ばしたり縮めたりしているとどんどん緩くなってくるのでお気を付けください。Focuscalmは特にそういった故障の原因となる問題はありません。
以上が両製品を使用してみての感想・気になった点でした。
よくあるお問合せ(Q&A)
MuseSは取り扱っていないのですか?
Muse2の後継機であるMuseS(発売:2020年)についてお問い合わせをしばしば受けますが、MuseSについては日本国内での技適の取得が完了しておらず、弊社でも取扱いは行っておりません(日本国内未発売)。技適の取得については、現状メーカー検討中となるため、進展があった際は、弊社HP等にて取扱開始のアナウンスをする予定です。時期は2022年8月時点で未定となります。
どちらを購入すべきでしょうか?
こちらのお問い合わせもよく頂きます。弊社では実験用としての利用の場合はFocusCalmをご提案しております。理由としては上述の通り、センサーがひたい部のみに集まっているFocusCalmの方が、より安定したデータ測定が可能なためです。一方で「マインドフルネス」に日々取り組んでいきたい、といった一般向けの利用の場合はMuse2とFocusCalmいずれを選んで頂いても良いと思います。上述のアプリの違いなどをご参考にして下さい。
- 主な利用法が「マインドフルネス」の場合(例:マインドフルネス、動きの少ない実験・研究):
- FocusCalm又はMuse2
- マインドフルネス以外で脳波を測定したい場合(例:動きのある実験・研究、スポーツ等):
- FocusCalm
その他、両製品の導入を検討している大学・法人様で分からないことや質問したいことがあれば、お気軽に以下の窓口よりお問合せ下さい。担当よりご連絡させて頂きます。
ハコスコのブレインテック事業
株式会社ハコスコは、理化学研究所の理研ベンチャー制度により2014年7⽉に創業し、ブレインテック事業のGoodBrainと、VRゴーグル・配信・映像制作からなるVRソリューションを提供しています。ブレインテック事業のGoodBrainでは、2019年より「GoodBrain」アプリの提供、FocusCalm・Muse2・Next Mindなどのデバイス提供、またそれらを組み合わせた脳波計測・ニューロフィードバックのソリューション提供を行っています。ハコスコ社のブレインテック事業では、今後も企業とのコラボレーションやブレインテック・ソリューションの提供を通じ、脳科学の応用によるゆたかな社会の実現を目指しています。